植物生命科学科

農作物の育成や変異について学び、より良い方法を模索する。農学部教員ブログ


生命の仕組みを探る。
学びのポイントは?
  • 植物の力を科学的に理解できる。
  • 農作物の生育や遺伝の原理を学ぶことができる。
  • 農作物を育成するための最先端の科学技術を知ることができる。
  • 新しい品種の開発について学ぶことができる。

生命科学(バイオサイエンス)

「植物の力」を科学的に理解する。

「植物の力」を科学的に理解する。いつの時代も農業を営む人々は、どうすれば作物の収穫量を増やし、品質を高めることができるのかを考え続けてきました。
植物に秘められた能力を明らかにし、増収をめざすため、植物生理学や植物遺伝学をはじめとする生命科学を学びます。
農業の基礎となる農作物の生育・変異の仕組みから、天気や害虫など成育に影響を及ぼす外的要因まで総合的に理解し、生命の仕組みを探ることを通してより良い農作物の育成方法を追求します。


畑へ出て、植物の尊さや役割を実感。

すべての生命活動の源になる太陽エネルギー。地球に降り注ぐ太陽エネルギーのうち約0.04%だけが、植物によって蓄積されています。
実際に畑へ繰り出し、太陽エネルギーを吸収した植物から始まる食物連鎖で、生き物が命をつないでいることを体感しながら植物を観察。
植物を取り巻く環境やその役割を、農家や学者の立場など多様な視点から研究し、新しい発見につなげます。

講義

植物生理・生化学Ⅰ

科学技術の発見を通して、植物の生きざまに迫る。

古本 強 教授

植物は光合成を行うことですべての生物の活動を支えています。どのように光エネルギーを化学エネルギーに切り替えているのか等、植物の生きざまを知ることについては、古くから研究者の興味を集めており、随分理解されたと捉えられてきました。分子生物学等の最先端研究と比較して古典的な領域とされていましたが、近年の科学の進歩から、細胞の中で起こっていることを結晶解析や顕微鏡解析から「観る」ことができるようになり、起こっている事象が分子のレベルで手に取るようにわかるようになる等、情報量がけた違いに増え、従来の考えが改まってきています。また、固着生活を送る植物は環境変化に敏感です。どのように環境変化を感知するのかについても随分理解がすすみました。これらの科学の進歩により、今、これまでの生理学が変わろうとしています。最新知見をもたらした科学技術の発見の過程等も示しながら、植物の生きざまに迫ります。
科学技術の発見を通して、植物の生きざまに迫る。

遺伝学基礎

生物の生命現象を考究する遺伝学。正しい知識が不可欠です。

遠藤 隆 教授

遺伝(inheritance)とは遺伝情報すなわち遺伝子(gene)が親から子に伝わる現象のことです。遺伝子は、生物の生命現象全般を司る設計図にたとえられます。ヒトでも、動植物でも、微生物でも、地球上の全生物は基本的には同じ遺伝の仕組みを持っています。ヒトの遺伝病も同じ遺伝の仕組みで起こります。遺伝子の物質的基礎、遺伝子の伝達の仕方、遺伝子が形質に発現するメカニズム、遺伝子が変化して生物が進化する過程等を考究する学問分野を遺伝学(genetics)といいます。我々人類を含む生物にとって最も重要である生命現象を考究する遺伝学は、理系・文系を問わず、大学生の社会常識として学ぶべき科目であります。現在では、農業での遺伝子組換え作物やヒトの遺伝子治療が現実となっていますが、それらに適切に対応するためにも正しい遺伝学の知識は不可欠です。本授業では、入学試験で生物学を選択しなかった学生でも遺伝学の基礎を学べるように、生物学の基礎から講義します。
生物の生命現象を考究する遺伝学。正しい知識が不可欠です。

昆虫学Ⅰ

昆虫の生態や行動を知り、他の生物や植物との関係を理解する。

塩尻 かおり 講師

地球上でもっとも種数が多いといわれている昆虫。本講義では、昆虫の生理、生態、行動を標本やスライド、ビデオを使って解説します。また、昆虫と他の生物とのかかわりを理解し、生態学的知識を身につけます。具体的には、喰われないための植物や昆虫の防衛戦略と、その防衛を攻略し捕食する昆虫との、攻防による進化と、花粉を媒介する昆虫や、植食性昆虫(植物を食べる虫)の天敵である捕食性昆虫と植物との共生関係の進化についても解説します。また、現在の昆虫にかかわる問題や昆虫の能力を活かした技術を紹介します。講義の後半では、共通の興味をもった学生でグループをつくり、テーマを決めてグループ発表します。そこで興味・調査・考察・発表という自己啓発を行うだけでなく、討論・共同作業という重要な社会人活動のひとつを経験します。
昆虫の生態や行動を知り、他の生物や植物との関係を理解する。

研究紹介

インターゲノミックスによるコムギのヘテロシス育種

中村 千春 教授

インターゲノミックスは同種あるいは異種ゲノム間の相互作用を解析する研究領域です。世界三大穀物のひとつでパンやパスタ等の原料として、わたしたちの食生活を支えているコムギはこうした研究の格好の材料です。コムギは異質倍数性という独特の進化を遂げた代表的植物で、細胞の核に存在する染色体からなる核ゲノムと細胞質の葉緑体とミトコンドリアに局在する細胞質ゲノムの遺伝系譜がともに明らかになっている稀有な植物種でもあります。加えて、コムギの細胞質ゲノムを近縁野生種のそれで置換した核細胞質雑種と呼ばれる貴重な遺伝コレクションが日米欧の研究者たちによって育成されています。研究の目的は、コムギ核細胞質雑種に見られる核細胞質ゲノム間応答(相互作用)の仕組みを明らかにして、その遺伝的な効果を高収量・高品質なパンコムギの育種に活用することです。具体的には、①細胞質雄性不稔と核の稔性回復遺伝子を利用した一代雑種の育成:近縁野生種の持つ異種細胞質ゲノムが誘発する雄性(花粉)不稔と核の稔性回復遺伝子による稔実回復の分子機構を明らかにすること、および、②異種細胞質ゲノムを利用した環境ストレス耐性品種の育成:核細胞質ゲノム間ヘテロシスが環境ストレス耐性に与える効果を明らかにすることです。そのため、種々の核細胞質雑種コレクションを材料に、3ゲノム間の遺伝子協調発現システムをさまざまな方法で解析しています。
中村 千春 教授

寄生性線虫が植物をだますメカニズム

浅水 恵理香 准教授

線虫は宿主となる植物の根に寄生し、コブを形成して定着し、そこで産卵して一生を終えます。草木を問わずあらゆる植物に感染でき、熱帯から寒帯まで広く分布することから、世界的に農作物に甚大な被害を与えています。農業の現場では線虫を安全に制御する方法の確立が重要ですが、そのためには線虫がどのように宿主植物への感染に成功しているのか、そのメカニズムを知ることが大切です。
植物は、根において土壌中の微生物と共生するシステムを持っています。たとえば糸状菌であるアーバスキュラー菌根菌は、陸上植物の多くに共生することができます。また、土壌細菌である根粒菌は、マメ科植物に共生します。このような共生関係は、植物の成長に必要な窒素やリンを供給するかわりに、宿主植物から光合成産物等の炭素源を得る相利的関係です。一方で線虫は、宿主植物から養分を搾取するだけの片利的関係を築きます。植物は、病原微生物から身を守るシステムを持っています。線虫が感染を成功させるためには、この防御応答システムを抑えるメカニズムを持っていると推測できます。
わたしは、寄生性線虫が持っている「植物をだまして侵入するメカニズム」の解析をすすめています。将来的にはそれを応用して、農業の現場で線虫被害を安全に制御する方法を開発できると考えています。
浅水 恵理香 准教授

植物とウイルス

奥野 哲郎 教授

地球上に生存するすべての生物は絶えずウイルスの攻撃にさらされています。したがって、農作物にとってもウイルスは恐ろしい病原体のひとつです。ウイルスは生きた細胞の中でしか増殖できない非常に小さな病原体です。多くの植物ウイルスは数個の遺伝子しか持っていません。では、ウイルスはどのようにして植物細胞内で増殖して、全身に広がり植物を病気にするのでしょうか。多くの植物ウイルスは、小胞体、葉緑体、ミトコンドリア、液胞等、植物細胞のさまざまなオルガネラ膜を利用して増殖します。わたしたちがモデルウイルスとして用いているレッドクローバーネクロティックモザイクウイルス (RCNMV) では、p27と呼ばれるウイルスタンパク質がさまざまな植物タンパク質をオーケストラの指揮者のように巧みに指揮して小胞体膜の脂質組成と構造を改変し、ウイルス複製工場を造り増殖します。一方、植物はウイルスの増殖を抑制するためのさまざまな機構を持っています。これに対してウイルスもさまざまな手法を用いて対抗します。ウイルスのタンパク質は多機能であり、植物の抵抗性を抑制する機能も持っています。RCNMVは、微生物やウイルスに対する抵抗性で重要な役割を果たす植物タンパク質を逆に利用して増殖することがわかってきました。植物細胞でのウイルス増殖機構の解明は、農作物をウイルス病から守るための手法の開発に重要であるとともに、植物のさまざまな生命現象を理解するのに重要な情報を与えてくれます。
奥野 哲郎 教授

※クリックすると画像を拡大します。

CURRICULUM

このページのトップへ戻る