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Faculty of Agriculture

農学部
農が拓く未来。

毎日をウマく生きる。

岩川 裕美 准教授
人の食べたい欲求を叶える管理栄養士を育てる。

みなさんが病気になって入院したら、何を楽しみに入院生活を送りますか。きっと「食事」ではないでしょうか。もしその病気が「糖尿病」「生活習慣病」「がん」などの症状だったら、「食事制限」されると思います。食べられるものが制限され、食べられるものも薄い味付け、もしくは少量となるかもしれません。それって非常に辛いことだと思いませんか。 私は長年、管理栄養士として病院に勤めていたことがあり、そんな患者さんを多く見てきました。そしてたくさんお話をさせていただく中で、「食べることは生きること」だと再認識しました。そこから私の臨床栄養学の研究ははじまりました。食事制限をされた患者さんのQOL(Quality Of Life=生活の質)を向上させられるように、毎日患者さんと向き合って、一緒になって、食べられる生活を考えています。食べられるといっても、点滴や栄養剤で補う栄養以外にも、口から食べることを第一に考える、食事が楽しいものであると思ってもらえるような解決策を考えています。
臨床栄養学というのは、「座学」と「実習」から成り立ちます。病気の特徴や医療現場の用語を知らなければ患者さんを知ることはできません。そしてこの学問は、患者さん一人一人で症状や対応の仕方が異なるので、「実習」がなによりも大切になります。患者さん一人一人と向き合い、コミュニケーションを図ることで見えてくることがあります。「座学」で学んだ点を、「実習」を通じて線にする、それが私の目指す臨床栄養学です。

臨床栄養学には夢がある。

現在では、病院に入院して治療を受ける期間が随分と短くなっています。必要な手術や治療が終わると患者さんはご自宅へ帰られます。その中で、病院から帰られた患者さんが適切な食事をとられているかが問題となっています。口では「栄養に気をつけて食事を考えてください。」と伝えても、実際にはどのような食事をとられていたのかは不明だったのが、私の以前勤めていた病院での実情でした。そんな状況を現場で感じて、変えたいと思いこの学問の研究を進めています。
臨床栄養学という学問は明確な答えがある学問ではありません。人を相手にする学問ですから、患者さんによってその内容は異なってきます。だから私は、いつも患者さんとのコミュニケーションを大切にしています。でも、いきなり治療の話をするのではありません。それでは患者さんの気が滅入ってしまい、どんなにバランスの良い食事を力説しても長続きしません。私は患者さんと一緒になって調理をしたり、一緒に食事をしたりしてコミュニケーションを図っています。
食事を媒体に患者さんとの距離を測り、患者さんの心を癒して、そこから本格的な栄養の話をしていきます。その際、「座学」として学んだ知識だけをお教えするのではなく、教科書などに書かれていることからは離れたこともお伝えする場合もあります。画一的な解決が臨床栄養学の本当の解決策ではないと私は考えていますし、そこがこの学問の面白さであり、難しさだと思います。

研究が創る未来
毎日をウマく生きる。

この学問の未来では、管理栄養士を「食べたい」という人間の欲求を叶えてあげられる存在にしていきたいです。もっと言うと、病気になったから好きだった食事を諦める、そんな人がこの世からいなくなる世の中を作っていきたいです。そのためにはたくさんの患者さんと、たくさんのコミュニケーションを図らないと研究は進みません。それは途方もないくらい大変な作業であり、時には人の「死」にも向き合わなければいけません。それでも諦めない、人が大好きで、臨床栄養学と向き合える打たれ強い学生さんに来て欲しいと思います。すべての経験が無駄にならない、振り返った時に必ず役に立つ学問だと私は信じていますから。

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