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Faculty of Agriculture

農学部
農が拓く未来。

ミライは、ウソの中にある。

植野 洋志 教授
GABAの特性を生かして、日々を美味しく、健康に。

人間の体の中にあるすべての細胞の表面には受容体というスイッチを持っています。例えば「ヒスタミン」はアレルギーの原因になる物質。鼻水が出たり、のどがかゆくなるのは体の中にある免疫細胞のスイッチをヒスタミンが押して、活性化させているからです。今、私が研究をしているのはその親戚となる「GABA」と呼ばれるアミノ酸。これは最初、脳の中から見つかったもの。興奮を抑制するリラクゼーション効果を持っていると言われています。私は「GABA」を作る仕組みを研究しているのですが、このGABAを作る遺伝子を人間は2つもっており、違う染色体なのに同じ働きをしています。その役割はいまも研究中で、例えばその一つを潰してしまうとマウス実験では興奮が止まらなくなりました。またもう一つをつぶしたマウスから生まれたマウスは上顎が作れないという結果が見られています。GABAを作る遺伝子そのものは、体にとって重要不可欠なものだったのです。同じ細胞で、同じ反応をしているのに、それぞれ潰した時に症状が違う。作られる仕組みを研究するだけでも、数え切れないほど未知な世界が広がっているのは面白いですね。

塩味を錯覚させることで、旨味を引き出す。

さらに近年の研究結果でGABAにはさらなる可能性が導き出されています。その一つが味覚。味覚は甘味、苦味、うま味、塩味、酸味の5つです。それらの中で塩味を感じる細胞の中ではGABAが作られています。しかも、普通は甘味なら甘味物質を捕まえて単体でしか感じないところを、塩味は伝達機構がありその他の味覚を刺激するのです。わかり易い例は、天ぷらに塩を付けて食べると旨味が増したり、スイカに塩をつけて食べると甘味が増したりしますね。では逆に、GABAを作る源を捕まえて、GABA生成をコントロールできれば、塩がなくても、塩がきたぞとスイッチを押せる。さらに伝達機構も加わり、よりものを美味しく食べることができるようになるのです。最近の実験では、塩の分量を減らし、その代わりにGABAの合成を刺激する成分を入れたパンを作りました。その成分は世界各地の様々な調味料を集めて、その中から抽出しました。そして、味覚の敏感な学生たちに減塩したパンを食べてもらった結果、塩分を少量にしたにもかかわらず、塩を入れているのと変わらない味を再現できていると評価されました。では今後、塩をとらないでよくなるかと言われるとそうではありません。減塩が近年は流行になっていますが塩自体は体に必要な成分。余剰に摂取をすることを抑えることが大事だということです。実際に、私は「塩味増強方法」という特許を取りました。GABAの研究をもとに、人の味を騙す物質を見つけることで、健康的で、より豊かな食生活を実現することが可能になります。

研究が創る未来
ミライは、ウソの中にある。

塩は塩味だけでなく、その他の味覚も引き出す重要な引き金になります。しかし一方で、腎臓病など減塩を余儀なくされた人は、塩味をとれず、食べ物の豊かさが失われることになります。もしGABAの研究結果で塩味を騙す調味料が開発されれば、そんな方々にも、塩は少量なのに、塩味を感じておいしい毎日の食生活を提供できるようになると考えられます。

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