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Faculty of Agriculture

農学部

農が拓く社会。

龍谷大学 農学部×株式会社アンデ 野生酵母を使って、地元に根ざしたパンを作りたい。

大文字山の野生酵母を使った食パンを共同開発

農学部の島教授は、京都・大文字山で野生酵母を採取。植物の花や樹液のほか、昆虫やハチの巣など約400種類から10数種のパン酵母を分離。その中で2種の大文字山酵母を使って地元企業・アンデと食パンを共同開発した。

京都の自然界に自生する野生のパン酵母を探索。

島教授
今回、食パンの共同プロジェクトを始めるにあたり、もともと私は自然界から野生のパン酵母を探索するという研究をしていました。そのきっかけは世界中でパンやお酒などの発酵食品に使われている酵母が「サッカロミケス・セレビシエ」という1種類だけしかほとんど使われていないことに疑問を持ったからでした。そこで京都の自然界を対象に酵母を探索するようになり、そこで見つけた400の探索源を活用して、地域に貢献できないかと思っていたところに有賀さんからの依頼が来たことがきっかけです。
有賀さん
私たちも地元に貢献したいという想いがあり、京都らしいイメージの出汁食パンを作ろうとしていました。しかし、今までの酵母だと、出汁のようなパン本来の材料以外のものが入るとうまく発酵しないことが多いんです。原因は酵母を通常よりも多く入れないといけなかったため。そこで、これは酵母から造らないといけないと思い、産業技術研究所へ相談に行って、先生を紹介していただきました。
島教授
採れた酵母の中から発酵実験を行ってしぼり込んだ2つ、それがたまたまどちらも大文字山のクヌギの木から採れたものでした。この2つの酵母はたいへんパン作りに向いているということがわかり、その酵母で製パン実験をやっていきました。

多くの可能性を秘めた大文字山酵母。

有賀さん
大文字山酵母は期待以上のものだったので、ちょっと驚きました。普通、野生酵母は発酵力が弱いので、オーバーナイトと言って24時間以上寝かしてやらないとうまく発酵しないんです。時間も手間も必要ですし、温度管理も難しいです。ゆっくり育てていかないといけないなと思っていたのですが、大文字山の酵母には今まで使っていた酵母と同じくらいの力がありました。
島教授
この大文字山酵母の特長は、まずは砂糖に強いこと。糖分が多いと浸透圧が高まって発酵力が落ちるのですが、糖分が高くても力を出してくれるタイプだと思います。
有賀さん
パンを作る工程でも驚いたことがありました。一時発酵が終わり、ベンチタイムの後、パンに物理的な力を加えるパンチング作業を行いますが、一番反応がいいのがこの酵母なんです。きゅっと締まってコシの強いパンができます。ただ、たいへん優れた酵母ですが、それでも製品化するまでは試行錯誤もあり、安定した品質で製品が作れるようになるまで、湿度を変えたり、温度を変えたりしながら2ヶ月はかかりました。
島教授
私もパンを食べましたが、本当においしいパンですよね。大文字山酵母を使った食パンへのお客様からの反応はいかがですか?
有賀さん
リピーターが多いです。当社では、この日にはこのパンしか焼かないというやり方で、受注を受けた分しか作らないのですがたいへん好評です。下鴨神社で開かれたパンのイベントでも大好評で、長い行列ができてわずかな時間で完売しました。この酵母で造るととにかくおいしいです。私自身、毎日食べて感動しています。

ドライイーストの製品化も視野に、新たな可能性を。

島教授
今後また新しいパン酵母が見つかれば、アンデさんにぜひお力を借りたいですし、滋賀は漬物が多いので、乳酸菌を集めようということを考えています。あとは大文字山酵母のドライイースト化ですね。今は生イーストの状態なので、やはり長持ちしないし冷凍すると少し調子が悪くなってしまうので、使いにくいということがあるのではないかと思っています。
有賀さん
それはぜひ、どうにかして実現していただきたいと思います。もしドライイーストができたら素晴らしいことです。95%のドライイーストが海外の製品なのは、日本の製品より発酵力が強いからですが、大文字山酵母はドライイーストとしても優れた製品になると思います。
島教授
また、本学の植物生命科学科には小麦の研究者が多くいますので、小麦のグループと一緒に仕事が出来れば、地産の酵母と国産の小麦をコラボするような研究で、ますます地域貢献できるのではないかと考えています。
有賀さん
私としてはまずこの食パンをゆっくり育てていって、お客様の反応を確かめながら次の商品開発につなげられたらと考えています。もっと美味しい食パンをこの酵母で作りたいですね。

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