食べものや農業に関する課題は、自然科学分野の研究だけでは解決できません。
それは、社会の仕組みや経済の動きと、深く関係しているからです。
食料農業システム学科では、食べものや農業に関する課題について、社会や経済、地域や環境など、社会科学分野の視点から考え、取り組むための学びを展開しています。
経済学や経営学、社会学などの基礎理論を学んだり、統計資料を分析したり、現地実態調査の準備や振り返り学修、学生同士のディスカッションを行ったりします。戦後間もない時期の貴重な資料をはじめ、全国各地から多彩な統計資料が収集・保管されているのも特長です。
食料農業システム学科 准教授
渡邊 洋之
大学におけるゼミとは一般に、教員の指導のもと、指定されたテーマや書籍の内容について、少人数の学生が自ら発表して討論する授業形態を指します。これだけでなく、このゼミのメンバーによるさまざまな取り組みも、ゼミの活動に含めたりします。食料農業システム学科では、このゼミ活動を中心に専門教育がなされており、専門教育を担当する教員がそれぞれ、卒業論文にいたるまでのさまざまな学びを提供するゼミを開講しています。また教員は、4号館3階に一つずつ演習室をもっていて、各ゼミ所属の学生は、3年生から週に1回はこの演習室に集うことになります。ただしゼミでの活動は、教員一人ひとりで違いがあります。私のゼミのように、聞き取り調査など社会科学の基本的技法について、演習室で徹底的に学ぶゼミもあれば、実際に農業の現場に何度も足を運び、地域の方々と共にプロジェクトを実施していくようなゼミもあります。なお演習室は、毎週のゼミでのみ使われるわけではありません。演習室はゼミ所属の学生に開放されているので、ゼミ生同士の話し合いの場として、または各々が自習する場としても使われています。
物理分野と地学分野に特化した多彩な実験を行える施設です。ホワイトボードやプロジェクター、小グループワークに適した多数の可動式ホワイトボードを完備。三葉虫をはじめとした化石類や鉱物類、岩石類の標本も充実しています。「地学実験」や「物理学実験」などの授業をはじめ、教員免許状更新講習や教員向けの研修会・講座などでも使用します。
農学科 教授
多賀 優
砂や泥が下水に流れていかない流し台を設置するなど、物理分野と地学分野の実験が行えるように設計された施設です。グループワーク用可動式ホワイトボードなど講義を円滑にすすめる設備も完備しています。理科実験室で行う「地学実験」では、地学に関する知識や実験技術を学ぶだけでなく、理科の先生として、子どもたちに地学の魅力を伝えるための手法や心構えを養います。また「物理学実験」では、実験の前に学生が必ず予想を立てる「仮説実験授業」を導入。学生の考えや意見を中心に組み立てた授業で、思考力を磨きます。これらの学びにより、小学校や中学校、高等学校で授業を運営する方法や教師としての話し方、児童・生徒の理科に対する興味・関心をかき立てる指導力なども身につきます。実際に理科の先生として活躍する卒業生も多くおり、農学部理科実験室での実践的な学びを現場で活かしています。物理実験の教材や化石類、鉱物類、岩石類の標本など、充実している点も特長の一つ。さらに、教員免許状更新講習や教員向けの研修会などにも農学部理科実験室は使用されます。現役の教師が研修を行うほどに充実した施設で、教員志望の学生は模擬授業の練習を行うこともできます。
大学院生のために、特別に用意された専用の研究室です。研究室・ゼミの垣根を越え、修士課程および博士後期課程それぞれの大学院生が共同で使用しています。さまざまな統計書や学術書なども揃っており、各自の研究を深めたり、資料の作成、調査の準備などを行ったりします。大学生にとっても常に身近で大学院生の学びの様子を感じることができます。
食料農業システム学科 教授
竹歳 一紀
農学研究科の大学院生が自由に使える専用の研究室で、ゼミでの研究報告の準備や論文の作成などを行います。農林水産省の統計資料や過去の学会誌をはじめ、今では入手困難な資料も揃っています。特長は、研究室・ゼミの垣根を越え、修士課程・博士後期課程の大学院生全員が共同で使用すること。お互いの研究内容について議論したり、日常的な会話を楽しんだりと親交を深めながら充実した研究生活を送れます。特に、研究のすすめ方や学会発表の方法、学会誌への論文投稿について先輩から直接教えてもらえる環境は非常に好評です。現在は、中国からの留学生も3名おり、国際交流の場にもなっています。私が指導する大学院生は、中国での果物のネット販売の興隆に対する卸売業者や農家の対応を研究したり、四川省での養蚕業が農家の収入にどんな影響を与えるかなどを調査したりと、多彩な研究をすすめています。社会や経済、地域や環境といった観点から食や農を研究するには、文献を読んだり、アンケート調査を実施したり、時には現地調査も行います。そのような研究調査のための資料作成や統計解析なども大学院共同研究室で行っています。