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Faculty of Agriculture

農学部
農が拓く未来。

虫の知らせで、無農薬を。

塩尻 かおり 教授
害虫から身を守る植物同士のコミュニケーション。

みなさん、コミュニケーションをとるのって動物だけだと思っていませんか?実は植物もコミュニケーションをとって生きているんです。と言っても直接話をしたり、動きでコミュニケーションをとったりするのではなく、『匂い』でコミュニケーションをとっています。これが私の研究でもある「植物間コミュニケーション」と呼ばれるものです。害虫などから被害を受けた植物が出す匂いを、被害を受けていない植物が受け取ると、前もって被害を受けないように防衛を開始します。被害を受けた植物が意思をもって周りの植物に匂いを放って知らせているのか、本能的に匂いを出してしまっているのかはまだ研究中ですが、植物の見方が変わってきませんか?
この植物間コミュニケーションは、草だけでなく樹木でも行われていることもわかっています。樹木の特徴は、他の樹木とのコミュニケーションに加え、自分自身に対しても匂いでコミュニケーションを行っているという点です。大きな身体に対して匂いを使って情報のやりとりをする樹木は頭がいいのかもしれませんね。

植物なのに人間らしい?

植物の思わぬ生態に出会えることが、この研究を続けていて面白いなと思う瞬間です。例えば先ほどの匂いのコミュニケーションの話ですが、実は植物の親子間ではその匂いが数値的に近いことがわかってきました。人間の親子のように遺伝という血縁認識が植物でも行われているのかもしれません。血縁関係が薄い者同士のコミュニケーションと比べて親子間のコミュニケーションは強いと言われています。植物でも親子愛が存在するって面白いなと思いました。
さらに、この植物間コミュニケーションですが、同じ種間で行われることはもちろんですが、他の種との間にも行われていることがわかってきました。セイタカアワダチソウとマメで上手くいった例ですが、セイタカアワダチソウが被害を受けたときに発する匂いがマメに有効に働きました。これって私たち人間に置き換えると、ヒトとイヌが意思疎通を図るということです。でも、動物と植物とで違うのは、コミュニケーションに明確な意図があるのかどうか。植物には明確な意図をもって匂いを発しているかは判明していません。現在考えられるのは、セイタカアワダチソウが被害を受けた時に出た匂いをマメが「立ち聞き」して自分の防衛反応を刺激しているという可能性です。植物も「立ち聞き」というまるで人間のような行動をするのです。こうしてよく植物を研究していくと、植物のなかに人間らしさが感じられるのが面白いですよね。

研究が創る未来
虫の知らせで、無農薬を。

この「植物間コミュニケーション」の研究を進めていくと、農薬を必要としない未来が実現できるかもしれません。植物自身を強くさせる匂いを人工的に植物に受け取らせることで、農薬を使わなくてもよい強い植物を育てることができます。農薬を使わずとも、安心で安全な野菜がみなさんの食卓に並ぶということです。さらにこの研究を日本国内だけに留めず、農薬を買えない、または安価だけど危険な農薬しか使えない発展途上国にも活かしたいです。世界どこでも農薬を使わないで、安心安全な野菜だけが流通する未来を創っていきます。そんな未来を、好奇心旺盛な学生さんと迎えたいです。私自身この研究を始めたきっかけは生き物への好奇心でしたから。

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