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Faculty of Agriculture

農学部

農が拓く社会。

龍谷大学 農学部×滋賀県米農家 滋賀のお米をカメムシから守れ。

斑点米を引き起こすカメムシ種調査プロジェクト

近江舞子の米農家から大津市農林水産課を通じて相談を受け、2016年より斑点米の原因となるカメムシ種の調査を実施。まずは予備調査として調査圃場を設定し、カメムシの種を特定。カメムシから水田を守るために、引き続き生態調査を続け、防除対策へとつなげていく。

米農家を悩ませるカメムシ。

西村さん
もともと私たちが農業を行う近江舞子にはカメムシが多く、被害が多く出ていました。斑点米と言って、カメムシが穂から汁を吸うと玄米に黒い斑点ができます。それが出荷の時に混じると売値がぐっと下がってしまう。農家にとってカメムシは悩みのタネ。そこで大津市の農林水産課を通して樋口教授を紹介していただいたのが始まりですね。
樋口教授
2015年の冬ですかね。農林水産課の方からご紹介いただいたのは。私は龍谷大学に来る前はずっと農林水産省にいて、そこで斑点米の原因となるカメムシを12年ほど研究していました。斑点米が混じることでお米の等級が変わります。農家の収入を左右する大きな問題ですので、何か力になれればと思いました。
西村さん
ここ近年は、特にカメムシが多くて。本当に困ったものです。一等米と二等米では、1000粒の中に1粒の斑点米が入っているか、2粒入っているかの違い。ただ、それが変わるだけで大体60キロで価格が1000円も変わってきます。4年ぐらい前から斑点米を除去する機械を入れているのでマシにはなっていますが、それでもなくなりはしないですね。
樋口教授
西村さんのところは色彩選別機を入れられているので、出荷する前に斑点米をある程度、選別していますよね。ただ、機械は高価なので全農家がそれを導入することはできない。しかも、選別もやり過ぎると出荷できるお米も減ってしまう。だからこそ、カメムシとどう付き合っていけばいいのか、まずはこの地域のカメムシについて調査をすることから始めました。

「守る」ために「知る」ことの大切さ。

樋口教授
今回、カメムシへの対策を研究するにあたり、水田と畦畔で発生種と発生状況の調査から始めました。西村さんからは周辺の雑草に問題があるとお聞きしていました。では、畦畔に雑草があることで、カメムシの被害が多くなるのか、小さくなるのか。そもそも関係があるのか、ないのかを調べないといけませんでした。
西村さん
先生に聞かれて改めて思ったのが私たちはどんなカメムシの種類がいるかも分からなかったということ。私たちはお米を守るためにカメムシについて知らないことが多かったです。
樋口教授
そこで私は田植え後から、刈り取られるまでの間、一週間に一度のペースで捕虫網を使って、カメムシを採取して種類と発生状況を調査しました。今年で二年目ですね。今のところ、ホソハリカメムシとクモヘリカメムシが原因種だと分かっています。現在は、基本的な生態を調査中です。いつごろ水田に現れて、どういう植物を餌や産卵に利用し、いつお米から汁を吸って斑点米が生まれているか。まだまだ調査で明らかにしていかなければいけないことは多いですね。
西村さん
調査の途中報告を聞いて、防除を既にしているのにまだまだカメムシがこれだけ出ているのかと、正直驚きました。おそらく防除のタイミングもあるのでしょうね。もしかすると、私たちが防除をした後に、カメムシがやってきているのかもしれない。
樋口教授
カメムシのやっかいなところは、移動分散能力が高いところなんですよね。成虫が水田に入ってきても、すぐに出て行く。しかし、別の成虫が入ってくる。だからこそ、防除の方法も単純に駆除するだけが選択肢ではなくなると思います。例えば、カメムシにとって稲はそんなに好む植物ではなく、周りの雑草を好むと分かれば雑草を刈らなければ水田への被害が減っていく。要は水田でのカメムシを管理すればいいので、農薬を使ってカメムシをゼロにする必要はなくなっていきます。

米農家の未来に、希望を。

西村さん
今後、このプロジェクトを広げていきたいと考えています。近年では離農する人も増えて、一人あたりの管理する水田はますます広がってきているので、防除するにも限界があります。私のところだけでも東京ドーム4つ分以上の面積があります。だからこそカメムシ被害を手軽に防げれば米農家にとって一つの希望になる。今年は去年に加えて、調査地域を広げていただいていますね。
樋口教授
以前に北陸でカメムシの防除対策をしたときは行政も巻き込んで10年はかかりました。今後は調査に学生たちも巻き込んで、もっと研究を深めていきたい。現在は、滋賀のカメムシマップを作ろうと学生たちと話をしていて、2-3年を目処に完成を目指しています。西村さんの農家の場合もそうですが、まずは自分たちが被害に遭っているカメムシがどんな種類なのかを知ることが防除の最初の一歩です。そして、この研究をさらに深めることで、斑点米を少しでも減らすことに寄与できればと考えています。
西村さん
心強いです。あともう一つの悩みである米の消費の仕方を農学部の学生の方々と協同で研究していきたいです。カメムシによる被害もありますが、米の消費低下は滋賀だけでなく全国的な米農家の悩み。米粉を使ったアレルギーフリーの商品も出てきていますが、お米をもっと消費してもらえるような商品開発をぜひ一緒にコラボレーションしていきたいです。

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