農場長
農学科 准教授
玉井 鉄宗
皆さんの足元に目を向けてみましょう。そこには、気の遠くなるような年月をかけて岩石が風化し生成された土壌粒子が敷き詰められています。その隙間には水や空気が満ち、動植物の生きた証が有機物や無機物として蓄積され、無数の微生物がそれらを用いて活動しています。これらは複雑に相互作用し、まるで一つの生命体のように機能しています。そこに植物や動物が加わることで、さらに複雑な関係が築かれ、いまだ完全には解明されていない世界、まるで小さな宇宙のような土壌の世界が広がっています。
農場は、古くから人の手によって土壌を管理し、農作物を生産する場として利用されてきました。しかし近年では、単なる食料生産の場にとどまらず、持続可能な農業の実現に向けて、物質循環の起点としての役割が求められています。そもそも、この小さな宇宙を制御し、活用することは容易ではありません。それでも、果敢に挑戦し続けているのが農業です。
龍谷大学農学部では、この挑戦を貴重な学びと研究の場と捉え、牧農場と堂農場の二つの農場を設置し、学生の学びを支えています。その一例が、全学科必修の『食の循環実習』です。農学部生全員が農作物の生産に直接関わり、生産から流通・加工・消費・再生に至る一連の過程を学びます。この実習を通じて、農業の奥深さを実感し、社会において自分が果たせる役割を主体的に考える機会を提供します。農場での実習や研究活動を通じて、自然に対する謙虚さと真実を見抜く力を身につけた学生を社会へ送り出していきたいと考えています。