農学部 食の循環トークセッション [龍谷農と。]

食と農にまつわる様々な課題に取り組むトップランナーをゲストに迎え、「食の循環」をキーワードに、龍谷大学農学部教員とのトークセッションで諸課題の本質的な解決に向けて、食と農の未来を切り拓きます。

農学部 食の循環トークセッション [龍谷農と。]

第4回テーマ 都市と農村をつなぎ、食の循環を
取り戻す試み

都市部の人が参加する体験農園の視点から、都市と農村をつなぐための課題とその解決策を語ります。

日時 : 2014年7月26日(土) 会場:「川の駅」はちけんやB1 「XingGARDEN(クロッシングガーデン)」

ゲストプロフィール

西辻一真 代表取締役

株式会社マイファーム 西辻一真 代表取締役 福井県出身。京都大学農学部卒業。2007年、株式会社マイファームを立ち上げる。体験農園マイファームを全国各地に広げながら、マイファームアカデミーなど、自産自消の理念をスタッフ間で共有することを大切にしながら、様々な事業を展開中。

龍谷大学農学部登壇者
古本 強 教授植物生命科学科古本 強教授
玉井 鉄宗 助教資源生物科学科玉井 鉄宗助教
香川 文庸 教授食料農業システム学科香川 文庸教授

トークセッションダイジェストムービー

7月26日に開催された龍谷大学農学部食の循環トークセッション第4回「都市と農村をつなぎ、食の循環を取り戻す試み」のダイジェストムービーです。
全ての内容をご覧になりたい方は、こちらからご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=oXnMl2eh6j0

トークセッション まとめ記事トークセッション まとめ記事

株式会社マイファームの事業内容

西辻 一真 代表取締役

株式会社マイファーム
西辻 一真 代表取締役

私たちは耕作放棄地、すなわち、使われていない農地をゼロにすることを目指しており、「自産自消を実現できる社会を創る」をベースに様々な活動に取り組んでいます。事業のひとつ、体験農園は“都市部の休耕地を活用して再生させていく”というもので、全国80ヵ所以上で展開しています。地方にも多数存在する耕作放棄地への対策としては、その土地を再生させ有効活用できる人材を育てるための専門学校を5ヵ所で展開。これまでに輩出した約300名の卒業生が全国で活躍中です。また、彼らへのサポートの一環として、野菜の販路を確保するための流通業も行っており、そこから派生して八百屋、さらに派生してレストランへと事業は拡がっていっています。まず農業ができる人づくりをして、その人づくりができた後はその人が作った物をまわしていく。そんな事業展開を続けています。

株式会社マイファームの事業から見える課題

西辻 一真 代表取締役

株式会社マイファーム
西辻 一真 代表取締役
都市部の人が農業する機会の不足

ひと昔前と違って都市部では多くの人が農業に興味を持ち、家庭菜園やベランダ菜園が増えています。しかし、そこからもう一歩踏み込んで農業をしたいとなった場合、提供できる場所や機会が非常に少ない。せっかく都市部の人が農業に興味を持ち、どんどん突き進もうという段階に来てもこの障壁によって阻まれてしまうと感じたため、課題に挙げさせていただきました。

古本 強 教授

龍谷大学農学部植物生命科学科
古本強教授の課題解決キーワード
本物・実物・本場を知る

都市部での農への興味はまだまだ不十分だと感じているので、農に興味を持つきっかけづくりが重要だという観点でお話します。僕は大学時代サイクリング部で全国を走り回っていたのですが、北海道のサクランボなど旅先で食べた農産物の美味しさには大変感動しました。嫌いだったチーズやワインも、本場ドイツで食べてみるとすごく美味しい。このように実体験で本物・実物・本場に触れるとイメージがすっかり変わるし、新たな気付きが生まれます。ある時農地に学生を連れていったのですが、「葉っぱがこんな形だなんて」と驚いていました。彼らはそれまでじゃがいもの葉っぱなんて見たことがなかったんです。こんな風に見た瞬間「あっ」と思うことが農地にはたくさんあります。一般の方なら旅行等で、学生なら実習やインターンで、農の現場を見たり体験したりする。それが、人を農に近づける一番良い方法ではないでしょうか。

玉井 鉄宗 助教

龍谷大学農学部資源生物科学科
玉井鉄宗助教の課題解決キーワード
分業から総合

戦後の経済発展をもたらした理由の1つに分業化が挙げられます。専門家を作って組み合わせていくことで効率や生産性をあげていく。もちろん良い面もありますが、その機械的な働き方によって仕事に価値を見いだせない、責任感が欠如するといった悪い面も出てきました。また、現代のストレス社会の大きな原因は分業にあるとも言われています。本来人間は総合的なものなのに、「都市部の会社に勤める」「田舎で野菜をつくって生産する」などの分業化が進んだ結果、社会にストレスが蔓延したという考え方です。これからの時代、「都市部の人が農業をする」「都市部と農村の交流」といった“分業から総合への流れ”を作る事が非常に大切なのではないでしょうか。自分は社会の分業の中で生きているということを自覚し、より総合的な世界へ自らを飛び立たせていく意識づけが必要だと思います。

香川 文庸 教授

龍谷大学食料農業システム学科
香川文庸教授の課題解決キーワード
白・黒・グレー

都市部の人が農業を体験したり農地を借りたりする際、実は白・黒とはっきり分かれないグレーな部分がたくさんあります。それを悪用する人もいますが、その一方で真っ当な事業に対して言われなき批判をする人も多い。たとえ現行の制度でグレーや黒であっても、有効なものならば制度の方を変革していくべきだと感じています。日本の農政は全国一律の法律で縛ろうという方向性ですが、地域の特性に応じた制度や仕組みを作ることで、より多くの人が農業に触れる機会が増えていくのではないでしょうか。多くの方が農地をいかに有効活用していくのかを追求し、様々な事業スタイルを模索しておられるにも関わらず、その事業スタイルが変化する過程で大元から外れていると批判が出たり、良い方向性への流れが滞ったりするケースが多々見られます。それが非常に残念ですね。多様なスタイルがあっていいし、どんな形でも農地を農地として使う流れが出来ればいいと思います。

西辻 一真 代表取締役

株式会社マイファーム
西辻 一真 代表取締役の課題解決キーワード
農業のルールを学ぶこと

なかなか機会が提供できない理由の1つに、農家さん側の「都市の人は農業のルールを知らない」という声があります。ここで水を止めると他に困る人がいる。自然栽培で草を生やすと迷惑がかかる場合もある。機械での草刈は前日までに近隣に伝えておく。そういったルールを都市部の人がきちんとわかってくれれば、農家さん側も受け入れやすくなります。地域独得のルールやつながりは田舎になればなるほど強くなっていくもの。事前に体験農園や近郊農家さんでルールをきっちり学び、準備をしてから行けば、比較的すんなり地域に溶け込めるのではと思っています。ルールを守る一方で農家の間には互助経済のようなものが成り立っていて、ナスをもらったからキュウリでお返しする、「草刈遅れているみたいだけど大丈夫?」と声掛けするといった助け合いの意識が残っています。これは都市部の人にとっても羨ましくなるような風習だと思いますね。

都市と農村の未来に期待すること

古本 強 教授

龍谷大学農学部植物生命科学科
古本強教授の回答
浄土真宗

僕が最近まで住んでいた東広島は、安芸門徒という非常に熱心な浄土真宗の信徒がおられる地域でした。新設された龍谷大学農学部へ就任するかどうかという時には、現地で知り合ったお寺さんの友人と夜な夜な話し合ったものです。新しい農学部を創り、学生を育てるのは大きな魅力です。しかし、その学生をどうやって地方に戻せばいいのか。僕が悩んでいるとその友人が、「浄土真宗のお寺は地域の人々とつながっている。それを地域に学生を溶け込ませる場とすればどうだろう」と言ってくれました。龍谷大学農学部の同じ系列に浄土真宗があり、そこには人のつながりがあるわけです。まだ思い付きの段階ですが、そういった人的資産を生かす方法もあるかもしれません。いずれにしても、これは大学が動くだけで解決するような問題ではありません。もっと広く大きな視点で時間をかけて考えなくてはならない。農業の問題全般に言えることだと思います。

玉井 鉄宗 助教

龍谷大学農学部資源生物科学科
玉井鉄宗助教の回答
点から線へ

前回のトークセッションからのキーワードですが、結局のところ食を大切にして農業というものをリスペクトできる人が増えなくては、こういった問題は何ひとつ動き出しません。先ほど申し上げた分業の社会では、個人は点として存在しているように感じています。しかし、実際のところ様々なつながりがあって初めて個人として存在できる。そのつながりを想像しながら生活することが重要ではないでしょうか。例えば、目の前にある食べ物を誰がどこで、どのように作ったのか。どんな自然の恵みを受けたものなのか。そういったストーリーを思い浮かべることが、食べ物の大切さや農家へのリスペクトにつながると思います。龍谷大学農学部ではこういった観点を大切にして、単に生産性を上げたり儲けたりするのではなく、食べ物がどんなストーリーでどんな人とつながっているのかを感じられるカリキュラムを組み、農の点から線へとつなげていける人材を育てていきたいと考えています。

香川 文庸 教授

龍谷大学食料農業システム学科
香川文庸教授の回答
ギョーザ
チキンナゲット

私は業としての農業をどう建て直すのか、どう活性化させるのかということを常に考えています。実は、今回のテーマで ある体験農園や貸農園といった都市農業を、業としての農業活性化にどう結び付ければよいのか非常に頭を悩ませていました。今朝、テレビで中国産チキンナゲットのニュースが流れていたのですが、街角インタヴューでは「国産を買うようにしたい」「食べ物に気をつけたい」という声ばかりが聞こえてきました。前回こんな話が出たの は何年も前で、中国産ギョーザが事件になった時でした。センセーショナルな出来事の後には「日本の農業を大事にしたい」「安全をお金で買う」となるのですが、 事件が起こらないと忘れ去られていく。こういった観点から業としての農と体験農園や貸農園をどう結び付ければよいのかを考えると、結局、農に触れて農を大事 に思ってもらうことに尽きるのですね。農に触れ、農業って大変だな、そんなに簡単に安くて美味しいものは作れないのだな、という意識を持っていただく ことが農の活性化につながっていく。私としても、こういう結論に辿り付けたのが今日の収穫です。

西辻 一真 代表取締役

株式会社マイファーム
西辻 一真 代表取締役の回答
食への興味

マイファームという会社を起業しようとしたきっかけのひとつに中国のギョーザ事件があります。このままだと自然と人間の距離が離れきってしまう。そんな危機感を抱いたことから、貸農園を始めました。冒頭で体験農園や貸農園に来た人が田舎にいく構造を創りたいと申し上げましたが、一方では野菜作りを楽しんでもらうことで鮮度や旬を味わったり、プロ農家さんの栽培テクニックを感じたりしてもらいたいという部分があります。そういったことに興味を持つことによって、生産者さん側の気持ちに立つこともできるでしょうし、生産者さんをもっと知りたいという気持ちも生まれてくる。最近、生産者さんもがんばっておられて、商品にQRコードや名前をつけたりされています。この情報を元に、フェイスブックで調べたり、直接生産者さんを訪ねてみたりと、どんどん行動を拡げてほしいですね。そういった面でも体験農園・貸農園を押していきたいと思います。

トークセッション Q&A <当日回答>トークセッション Q&A <当日回答>

個人的に畑を借りて耕作している者です。耕作放棄地や遊休地を都市部の人が貸農園として利用することが具体的にどう都市と農村をつなぐことになるのでしょうか。都市から農村への一方的な利用であり、農村の方や農地を提供されている方にとってメリットはあるのでしょうか。実際に都市・農村の共栄的な事例があるなら紹介してください。

都市部でマイファームの体験農園・貸農園を使っている方の多くが、農業の専門学校のほうに移行してくれています。卒業生は現在約300名。卒業後には大分県、愛媛県、石川県ほか全国各地に飛び立ち、農業を始めたり農業生産法人に勤めたりして活躍中です。ですから「どういうつながりがあるのですか」という問いに対しては、「都市で農業を始めた人が、何年か後には田舎のほうへ興味を持って飛び立っていく」ことが挙げられるかと思います。農村のメリットについては、「若い人が来てくれるし、地域の農業の起爆剤になってくれる」と期待してくれている部分にあると思います。 【西辻一真様回答】

ご質問の構図は龍谷大学で考えているインターンシップに似ていると思います。学生をインターンシップ先の農業法人とか企業とか農業者に預ける。そして一定期間経つと帰ってくる。それは、僕らや学生にとって意味あることですが、果たして受け入れ手の方にどんな意味があるのかということですね。僕は受け入れ手の方にこのようにお願いしています。「今日明日、来年再来年に見返りやペイバックがあるというものではありません。しかし、私たちが一体化して教えていかないと学生は育たない。育てた学生はいずれどこかで農業の一端を担います。どうぞ長い目・広い目で見て、そういう部分への投資をお願いしたい」。もう1つお話しているのが、大学では美味しい・美味しくないといったことを分析する技術があるので、そういう課題を学生に預けてもらえば、大学に持ち帰って解析できるということです。企業の課題を解決するというのは大学の1つの役目でもあるのですから。都市部の人の体験農業の場合は、帰って周りの人に農について伝えるのが果たすべき役目ではないでしょうか。【古本強教授回答】

トークセッション Q&A <当日未回答>トークセッション Q&A <当日未回答>

交通の便が充実し、地方の人、物、金、すべてが都市に吸収されつつある中、いかにして良好な関係のもと、都市と農村をつないでいくのでしょうか。

人、物、金が集まるところには、ストレス、過剰供給、金余りが発生します。人、物、金がないところには、自然、適切消費、人と人の温かさが発生します。それに興味をもつ人が今後増えてきますし、農村は休み場として、時々帰る第二の故郷として生きると考えています。【西辻一真様回答】

野菜や果物が大好きで、ほぼベジタリアンです。そのため、毎日の食事にはそれらが欠かせません。関西で作られた地元産の野菜を購入していますが、実際この日本では、食料自給率を上げるという方向へは進んでないように感じるのですが、いかがでしょうか。

我が国全体の食料自給率について議論する場合、どのような基準で自給率を算定するのかに気を配らねばなりません。総合的な自給率には金額ベースとカロリーベースという二つの計測方法があります。野菜(特に国産野菜)は高価ですが、含まれるカロリーは低いです。だから、国産の野菜を沢山消費した場合、金額ベースの自給率は向上しますが、カロリーベースの自給率はあまり向上しません。また、我が国における食料自給率問題の根幹は家畜を育てるために必要なエサにあります。家畜を育てるためにはエサが必要ですが、我が国はその大半を輸入に頼っています。エサも食料である以上、自給率の計算に組み込まれるので、畜産物の消費が増え、それに伴ってエサの輸入が増えると自給率は下がることになります。残念ですが、国産野菜を積極的に購入しても――少なくともカロリーベースの――自給率向上には直結しないのです。【香川文庸教授回答】

消費者側への農に対する理解を深めることが必要だと思いますが。そのためには、消費者への教育が必要になると思うのですが、そういった教育を仕組化することはできないのでしょうか?

農業の発展を図る上で、消費者側への農に対する理解は不可欠です。特に、農業への理解と関心や食と食生活への興味を高めるためには子どものころから農に触れさせることが重要となってきます。 既に農林水産省では、文部科学省、総務省との連携のもと、こどもが農林漁家に宿泊することにより、農山漁村の生活や農林漁業を体験するという「子ども農山漁村交流プロジェクト」や、日帰り等で作付けや収穫作業等を体験する「教育ファーム」を実施しています。農林水産省が全国市町村を対象に行った調査によると、全市区町村のうち「市区町村内に教育ファームの取組をおこなっている主体がある」と答えた市区町村の割合は8割を占めているようです。 このように、自治体などによる消費者と生産者をつなぐ食農教育の推進は進められていますが、まだまだ一般的に普及しているとは言えません。こうした行政の取り組みと連携し、子どもの頃から「農」に触れさせる経験をさせる仕組みをつくることも大学としての役割かもしれません。【古本強教授回答】

農村にいかにお金が落ちる仕組みができるかがポイントだと思うのですが、今の農村(小さな里山)で作っているもので都会に通用するのでしょうか?何をすれば都会で通用する農作物を作れるのでしょうか?

とても難しい質問です。魅力ある農作物ないしはその加工品を開発するには「人」が居ることが大前提ですが、農村(小さな里山)の多くは過疎に近い状態にあり、活力ある農業が営まれているわけではありません。いくつかの例外的な成功事例を観察すると、結局は、「品質の高いものを作り続ける」という極々当たり前の事柄に行き着きます。また、口コミや偶然メディアに取り上げられたことがヒット商品につながるケースもあるようです。「良い物」の存在を如何にして社会に発信するのかも大きな意味を持っています。【香川文庸教授回答】

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