農学部 食の循環トークセッション [龍谷農と。]

食と農にまつわる様々な課題に取り組むトップランナーをゲストに迎え、「食の循環」をキーワードに、龍谷大学農学部教員とのトークセッションで諸課題の本質的な解決に向けて、食と農の未来を切り拓きます。

農学部 食の循環トークセッション [龍谷農と。]

第3回テーマ 日々の生活から創りだす食の循環 ~ 「半農半X」ライフスタイルに農を取り入れる方法 ~

多様化するライフスタイルの中で、今注目されている「半農半X(エックス)」。半自給的の暮らしをしながら、自分がやりたいことをやる新しい生き方を語ります。

日時 : 2014年6月20日(金) 会場 : グランフロント大阪 南館6F 紀伊國屋書店

ゲストプロフィール

塩見 直紀 代表

半農半X研究所 塩見 直紀 代表 1965年、京都府綾部市生まれ。株式会社フェリシモを経て、2000年、半農半X研究所を設立。約20年前から「半農半X(エックス=天職)」コンセプトを提唱。著書は中国語訳され、台湾、中国などにもひろがり、海外講演もおこなう。著書『半農半Xという生き方 実践編』『綾部発 半農半Xな人生の歩き方88』など。

龍谷大学農学部登壇者
古本 強 教授植物生命科学科古本 強教授
玉井 鉄宗 助教資源生物科学科玉井 鉄宗助教
山崎 英恵 准教授食品栄養学科山崎 英恵准教授
香川 文庸 教授食料農業システム学科香川 文庸教授

トークセッションダイジェストムービー

6月20日に開催された龍谷大学農学部食の循環トークセッション第3回「日々の生活から創り出す食の循環」〜「半農半X」ライフスタイルに農を取り入れる方法〜ダイジェストムービーです。
全ての内容をご覧になりたい方は、こちらからご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=YOLRpXuQfoc

トークセッション まとめ記事トークセッション まとめ記事

半農半X研究所 代表
塩見 直紀様が提唱されている
「半農半X」というライフスタイルとは?

半農半X研究所 代表 塩見 直紀様が提唱されている
「半農半X」というライフスタイルとは?

半農半Xとは「持続可能な小さな農ある暮らしをベースに、天与の才(X)をより生かす生き方・暮らし方」だと定義づけています。ここでの「農」は田んぼ(米)や畑(野菜)だけを指すのではなく、市民農園やベランダ菜園でもいい。味噌づくりや一輪挿し、和菓子、掛け軸なども広い意味で「農」に入ると捉えています。
「X」には、使命(ミッション)、天職、天命、天賦の才、ライフワーク、生きがい、役割、大好きなこと、得意なことなど、好きな言葉を当てはめてみて下さい。
小さな農に親しみつつ、「X」で食べていく。それが「半農半X」であり、すなわち、土や自然に触れることで謙虚さをとりもどしながら、生きる意味を見出していこうという提案です。

「半農半X」から見える課題

半農半X研究所 代表 塩見 直紀様から提示された課題

半農半X研究所 代表
塩見 直紀様から提示された課題
農業配慮者人口の増加

農業に配慮できる人、リスペクトできる人、「農業って大事だな」と思える人。そんな「農業配慮者」を増やしていくことがこれから重要なのではないかと考えています。「農業配慮者」の人口が増えれば国はもっと良くなっていくのではないでしょうか。問題はどうすればこの人口を増やせるのかということ。農の魅力やたいへんさをどのように伝えらたらいいのか、今日は先生方のお知恵をお借りできればと思います。

龍谷大学農学部植物生命科学科 古本強教授の課題解決キーワード

龍谷大学農学部植物生命科学科
古本強教授の課題解決キーワード
直接体験(やってみなわからん)

龍谷大学農学部では400名の入学者全員に畑作業をさせようと考えています。学生には小さな土地であっても、どのくらい収穫できるのか、1株にどれくらいの作物がつくのか、直接体験できる機会を提供したい。プロが作るよりずいぶん下手なものができるでしょうが、食べたらきっと美味しいと感じるでしょう。そして、その時初めて彼らはプロが作ったものの立派さや美味しさに気付くと思います。多くの農学部では直接土に触れる機会はほとんどありません。しかし、農のいいところは、土に触れて作ってみるとそこからいろんなことが見えてくるという部分にあります。直接的な体験があってこそ、素晴らしい作物を産み出す農業従事者へのリスペクトが生まれるのではないでしょうか。

龍谷大学農学部資源生物科学科 玉井鉄宗助教の課題解決キーワード

龍谷大学農学部資源生物科学科
玉井鉄宗助教の課題解決キーワード
自分を大切に

私が今まで食べて一番美味しかったものは、高級寿司店とかではなく、小学校の遠足の山登りで、まだかまだかと登ってやっとたどりついて食べたおにぎりです。同じように農に関しても、自分が手をかけて育てたものは、プロの農家の味に遠く及ばなくても自分にとっては美味しい。今、店についている星などの情報が味の判断基準となっていますが、それは所詮他人が評価したものです。自分にとって大切なもの、美味しいものをもっともっと考えていくことが必要なのではないでしょうか。遠回りかもしれませんが、それが農業配慮者を増やすことにもつながると思うし、ひいてはと日本や世界の農業を変える原動力になり得るのではないかと思います。

龍谷大学農学部食品栄養学科 山崎英恵准教授の課題解決キーワード

龍谷大学農学部食品栄養学科
山崎英恵准教授の課題解決キーワード
食の嗜好と志向

食べることは農業につながっています。今食べている美味しいものは、農業がなくなると食べられない。自産自消できるのが理想でしょうが、誰もが実現できるわけではありません。人間の利己的な部分ではありますが「食べられなくなるのは嫌だ」というベクトルから自分がこうあってほしいと望む農業へと誘導できるのではないでしょうか。もっと食に向き合うという教育や風潮を高め、志向・嗜好から関心を引き出していくことが、都会に住む人も含めて農業配慮人口を増やすことにつながるのではないかと思います。

龍谷大学食料農業システム学科 香川文庸教授の課題解決キーワード

龍谷大学食料農業システム学科
香川文庸教授の課題解決キーワード
少年野球

最近中学高校で野球部に入る子が減ってきているそうです。1つめの理由はカリスマ選手の減少。2つめはお金のかかる競技であること。こういった要因から、高校野球や草野球のレベルが下がり、プロ野球人気も衰退してきています。この現象を農業に当てはめてみると、輝いている農家さんの少ないことが農業に関する興味を薄れさせているのではないでしょうか。また、国産の農作物は高いからと安い外国産ばかり食べていると、実際に作ることへの興味も消えていってしまう。プロの農家がしっかりと輝きを放ち、かつ、半農半Xの農家がそのプロに教えを乞うていくことが、農業発展への鍵ではないかと感じています。

半農半X研究所 代表 塩見 直紀様の課題解決キーワード

半農半X研究所 代表
塩見 直紀様の課題解決キーワード
・戦略的情報発信
・グランドビジョンの提示
・センス・オブ・ワンダー~自然への畏れ・感謝・はっとする心~

この10年間で世の中の情報量は530倍に増えたそうです。その中で埋もれてしまわない核心をついた情報を発信することが今の研究テーマ。農業にも戦略的情報発信が必要な時代だと感じますね。一方で、国を変えるような豊かなグランドビジョンを提示することにも力を注いでいくべきだと思います。あとは、自然に対する畏れや感謝、はっとするような心、すなわち「センス・オブ・ワンダー」を育む教育ですね。50年くらい前にレイチェル・カーソンがエッセイで発表しているのですが、「子どもは生まれながらセンス・オブ・ワンダーを持っているので、まわりの大人はそれを無くさないよう育てることが重要」とあります。子どもの自然に対する心を育み、そして大人になっても子どもの心を忘れない礎を築いておくことが大切だと思います。

農を取り入れた生活の未来

龍谷大学農学部植物生命科学科 古本強教授の回答

龍谷大学農学部植物生命科学科
古本強教授の回答
農を感じる仕組みづくり

大学の学びだけでなく、普通の生活においても農から学ぶことはまだまだたくさんあります。ですから、僕の「半農半X」は「半農半学」にしたいと思います。今回のトークセッションでは農を感じる仕組みづくりの必要性を痛感しました。僕たちは大学でその仕組みを作ろうとしていますが、それ以外でもマスメディアであったり、本屋であったり、漫画であったり、いろんなものが農に向かうことで、農業配慮者人口が増えるでしょうし、農を起点に学べる環境も整ってくるでしょう。それらに貢献できる生き方をしていきたいですね。

龍谷大学農学部資源生物科学科 玉井鉄宗助教の回答

龍谷大学農学部資源生物科学科
玉井鉄宗助教の回答
エネルギー生産産業へ

唯一エネルギーを生産する産業が農。他の産業は全てエネルギーを消費します。しかし、残念ながら現代農業が進む上で、農業ですらエネルギー消費産業へと変わっていっている部分があります。持続可能な社会を創るためには、農業をエネルギー生産産業へと転換することが不可欠です。難しい問題ですが、研究者はできるだけエネルギーを使わない農業生産を追求する、消費者はそういったものを好んで選んでいくといった個人個人の意識が重要だと思います。私は僧侶でもありますので、人生のテーマは「半農半仏教」。神や自然への畏敬の念が薄れていることから、残念ながら仏教は農業と同じく衰退の道をたどっています。私は僧侶として仏教と農業が、日本で、世界で、より大切にされる社会を目指していきたいと思います。

龍谷大学農学部食品栄養学科 山崎英恵准教授の回答

龍谷大学農学部食品栄養学科
山崎英恵准教授の回答
食の教養を高める

私の今後のテーマは「半農半栄」です。「半農によって栄える」と「栄養」をかけてみました。食のプロとして、農業を取り入れることで自分も社会も豊かな生活・栄えた生活ができるという可能性を教示できればと思っています。「お腹がいっぱいになったらいい」という食の概念から離れて、巷にあふれる食から何を選択するべきなのかまで踏み込んで教育していく。それが農学部で食に携わる人間の使命であり、そういう形で農業に貢献していければ幸いです。

龍谷大学食料農業システム学科 香川文庸教授の回答

龍谷大学食料農業システム学科
香川文庸教授の回答
地に足の着いた仕事

まだ半農といえることをしていないので、今は「半〇半考」もしくは「半〇半見」といった状態。農については、これからがんばっていきます。今、自分がしなくてはならないのは地に足のついた仕事。農業の現場や農村の実態をろくに見ないで難しいことばかり言う人がいますが、そうではなく実態をちゃんと見て聞いて把握した上で、その人の立場に立った仕事をしていく。それが龍谷大学の研究の発展につながっていくと確信しています。

半農半X研究所 代表 塩見 直紀様の回答

半農半X研究所 代表
塩見 直紀様の回答
・A×B×C/好きな場所で自分のキーワードを深める ・1人1研究所

今日は皆さんに宿題を出したいと思います。まず、自分のキーワードを深めてみましょう。自分の好きなこと、得意なことなどを、A、B、Cと3つ挙げて下さい。例えばAには写真が入るとします。でも写真好きなライバルはたくさんいる。そこで、Bに料理を、Cに風水をといった他のキーワードを掛け合わせることでオリジナリティが生まれてくるわけです。次に生まれ故郷や今住んでいる街を「好きな場所」=「自分の根」と定めて、さらにキーワードを深めていきましょう。2つめは自分の研究所を作り、自分のテーマを深めていく「1人1研究所」を実践すること。
そして、生涯そのテーマを追求し、成果を独占せず、広く社会に発信してください。願わくば、そこに農のある暮らしがあればと思います。

トークセッション Q&A <当日回答>トークセッション Q&A <当日回答>

日本の農業を発展させるためには集約農業を行っていくことが大切だと思いますが、兼業農家・家庭菜園を個人が行っていくことに、集約的農業を行えるよう整備していく以上の利点があるのでしょうか?

まず、条件が恵まれている場所とそうでない場所に分けて考える必要があると思います。画一的に大規模農業一辺倒でいこうというのが今の農政の流れですが、それに当てはまらない地域もあるわけで、そういったところで大規模型・株式会社型の農業なんて土台無理な話です。例えば、小規模の集落で手をかけて育てられた農産物はどうしても若干高くなりますから、それをあえて買おうという消費者教育など対策を立てる必要があります。大規模農業ができるところはすれば良いでしょうが、そうでないところにその型を当てはめるのは危険だと思いますね。【香川文庸教授回答】

若い世代と共に綾部で暮らそうという思いがあるのですが、安定収入の問題があります。父母80歳代、主人はサラリーマンで娘はデザイナーをしております。娘夫婦は農業に興味があるのですが、食べていく、あるいはその土地で子どもを育てていく自信が持てず、仕事と農業の両立についても悩んでおります。そのあたりをどのように半農半Xにあてはめて考えていけばよいのでしょうか。

ご両親とご夫婦、娘さんご夫婦の計6人来られるわけですよね。6人もいらっしゃるなら助け合えますし、力を合わせれば何とかなるのではないかと思います。娘さんはデザイナーをされているということですが、実は田舎にこそデザイナーが必要なんです。デザイナーの力で、商品パッケージやチラシ、ホームページの発信力が格段にあがりますし、地域の商品が洗練されてきます。その代表的な存在が高知県におられる梅原真さん。第一次産業に特化した骨太のデザイナーさんですが、ああいう人が増える時代が必ず来ます。一度娘さんともお話してみたいですね。【塩見直紀様回答】

トークセッション Q&A <当日未回答>トークセッション Q&A <当日未回答>

家庭菜園を始める時(農地を借りて)、畝(うね)づくり(耕して)と周辺の草刈りが大変です。農家さんと信頼関係を作ってお願いする方向を考えていますが、他の地域ではどのようにされていますか。

まずは、小さな面積から始め、畝(うね)づくりも周辺の草刈りも依頼された方が良いかと思います。賃料にそうした管理を委託した費用を支払う契約をかわしてみてはいかがでしょうか。信頼関係が全てですので、無農薬などで行う場合は農業への理解があることも重要です。管理人つきの貸農園を借りるのも一つの方法かもしれません。【塩見直紀様回答】

管理栄養士として食の循環、特に農の発展にはどのようにアプローチすることができますか。

現在わたしたちの食生活は、ライフスタイルの多様化や食品産業・外食産業の発展や輸入農産物の増大などに伴って大きく変化し、それに伴うさまざまな問題も同時に生じてきています。栄養士・管理栄養士は「私達の健康」を「食」を通してサポートする職業です。「食」は「農」によって生み出されており、両者は相互に深く関係しています。健康は当然のことながら、色んな意味で「健全な食」をこれから私達が考え深く理解するためには、「農」にまで遡って考える必要があります。また、消費者が求める「食」や健康のための「食」、人生を豊かにするためのこれからの「食のあり方」は、今後の「農のあり方」にも大きく影響を及ぼしていくでしょう。龍谷大学では、農学部に食品栄養学科を設置することにより「食」とともに「農」の関わりを意識しながら広い視野を持って、国民の「食」に対する健全な考え方を育むとともに、そのことを通して「農」の発展に貢献できる管理栄養士を輩出したいと考えています。【山崎英恵准教授回答】

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